探偵社で記入用紙に必要事項を記入し、いくつか確認の質問に答えると、いよいよ調査プランの話になりました。
「当社では様々なプランをご用意しております。どのプランで調査なさいますか?」
事前にネットで下調べをしてはいたのですが、改めて説明を聞くと、2時間で2万円の短時間調査から、フリータイム3日間で40万円近くするプランまで様々でした。
正直、どのプランを選んだか細かい記憶は曖昧なのですが、たしか私は2時間の調査を3回ほど依頼し、様子を見ながら必要に応じて追加調査をお願いするという流れにしたと思います。
料金も6万円程度だったと記憶しています。
なるほど、大金を払って「はい、あとはよろしく」という感じではなく、自分で「この日、この時間が怪しい」と予測してピンポイントで依頼するわけか……と納得しました。
探偵さんいわく、
「ご一緒に生活しているご依頼者のほうが、怪しいタイミングには気づきやすいですから」
とのこと。
支払いについては後払いでも構わないそうですが、契約成立の証として、その場で1,000円以上の支払いが必要とのことでした。
私はその日に1万円ほどを渡し、日程については後日連絡するということで契約を済ませました。
この時、連絡用として探偵さんとLINEの交換をしたことをよく記憶しています。
自分としては、とても深刻で少し後めたいことをしているという状況と、LINEのポップなアイコンをお互いに確認し合う作業に妙なギャップを感じました。
こうして私は、初めての探偵調査に向けて一歩を踏み出すことになったのです。
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9月某日。祝日。
祝日も出勤日の私は、関西から四国にかけての一泊二日の出張予定でした。
一件目は関西の取引先へ。そこから高速バスで四国に入り宿泊し、翌日はもう一社訪問して夜に帰宅する、というスケジュールでした。
一方、妻の会社は祝日は休み。
(これは……隙だらけだ。何かあるかもしれない)
そう思った私は、この日の調査を探偵に依頼しました。
初日の仕事を終えて、高速バスのバスターミナルから関西から四国行きの高速バスに乗り込みます。
バスは神戸の湾岸地帯を抜け、明石海峡大橋へ。やがて淡路島へ入っていきました。
調査中に何か動きがあれば連絡をもらえることになっていたので、スマホを気にしながらバスに揺られていました。
バスが鳴門大橋を目指すあたりだったでしょうか。バスの座席に座る私のポケットの中の電話が鳴りました。その場では出ることができず、着信が終わるのを待ちました。
その後、留守番電話メッセージだったのか、ショートメッセージだったのか……記憶は曖昧ですが、その内容を確認した瞬間の衝撃だけは、いまでも鮮明に覚えています。
「対象者(元妻)が男と二人で落ち合い、一緒に行動しています」
ついに来たか。
本当に来てしまった。
疑念が、確信に変わった瞬間でした。
バスに揺られながら、私は呆然としていました。
それでも意を決して探偵に電話をかけたとき、さらなる衝撃が待ち受けていたのです──