自ら踏み出す一歩

妻の不倫と離婚の記録

追加の調査を依頼するにあたって、どのプランにするか少し迷いました。

結局、前回と同様に「指定した日時に数時間の調査を3回実施してもらうパックプラン」を選びました。10回の調査がセットになったプランや、期間を決めて調査を無制限でおまかせできるプランもありましたが、当時の私にはそこまでの金銭的余裕がありませんでした。

私たち夫婦は、それぞれ別の口座で収入を管理しており、家計は分担制でした。私は家のローンやネット代、元妻は食費や日用品などを担当。携帯代や趣味に関わる出費は、それぞれが自分で支払っていました。光熱費は義実家がまとめて負担してくれていたため、お金のことで大きな揉め事はこれまでありませんでした。

とはいえ、お互いの貯蓄状況は知りません。ただ、元妻とは同じ会社で働いていたこともあり、収入のおおよその見当はついていました。生活費の分担や使い方からも、彼女には私よりも余裕があったのではないかと思います。——このあたりの「金銭感覚のズレ」が、後々の衝突の火種となっていきます。

さて、追加の調査は、私が外出するタイミングに合わせて依頼する方針でした。しかし、いざ慎重にタイミングを見計らっている時に限って、突然「今日は遅くなる」と元妻から連絡が入ったり、朝方まで帰宅しないことが続きました。

そのたびに、私はイチタニさんに「今夜、怪しい動きがありそうです」と連絡を入れましたが、当然ながらそんな急に動けるわけもなく、もどかしい思いばかりが募っていきました。

そして私は、ある決断をしました。

——自分でも動こう。

浮気調査を依頼しているとはいえ、探偵に任せきりではなく、自分の手でハシモトとの継続的な関係を示す証拠を集められないかと考えるようになったのです。言い逃れできないほどの証拠を積み上げ、彼らを追い詰める。そう思うようになっていました。

ある日の仕事終わり、私は意を決してハシモトのアパートの前まで行ってみることにしました。

当然、彼は私の車を知っています。アパート周辺をうろついているところを見つかれば、私が不審に思って調べていることが元妻や彼にバレてしまう。それは何としても避けたかった。

私は少し離れたスーパーに車を停め、歩いてアパートの方へ向かうことにしました。

時刻はたしか19時頃だったと思います。まだ夏の名残がある夕暮れで、完全に暗くはないものの、影に紛れるには少し明るすぎる時間帯。私は通行人や周囲の車を気にしながら、慎重に足を進めていきました。

ハシモトのアパートは大通りに面していますが、建物の側面しか見えない構造です。駐車場があるのは裏手にあたる路地側。私はその路地の角で立ち止まり、周囲を伺いながら、そっと目線だけをアパートの駐車場へ向けました。

そこに——

私は見たくなかったものを、見つけてしまいました。

元妻の車が、ハシモトのアパートの駐車場に、確かに停まっていたのです。

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